向坂逸郎(一八九七年二月六日生まれ)は熊本の第五高等学校から東京大学法学部経済学科に進んだ。大森義太郎、宇野弘蔵、有沢広巳らと親交をむすぶ。二二年末ドイツに留学。二五年春帰国して九州大学法文学部助教授に赴任。翌年教授に昇進。
二八年四月、九大当局から「左傾教授」としてパージされ上京。大森義太郎と世界初の改造社版『マルクス・エンゲルス全集』の編纂・訳出に携わる。また改造社の『経済学全集』に『資本論大系』を執筆。二八年秋に雑誌『労農』同人になり、実際運動への関与をはじめる。
三〇年から価値論論争、地代論論争に参加し『地代論研究』を上梓。三二年に岩波茂雄から『資本論』翻訳を依頼されたが岩波の都合で中止。三三年から、ファシズム経済(統制経済)論や、知識階級論、自由主義論などを論じる。
三五年から講座派との論争に参加。日本マルクス主義史上最大の日本資本主義論争を領導。『日本資本主義の諸問題』を上梓。三五年八月に『マル・エン全集』二九巻全三三冊を完結させた。『労農』の後継誌として三五年に刊行された『先駆』の責任者を務める。
三七年一二月一五日、治安維持法違反容疑で検挙。三九年五月に保釈され、以降控訴審が敗戦まで続く。保釈後は当局の圧力で訳業も不可能となり農耕で大勢の家族を養う。